踊り徒然

2006年5月はじめた日舞に加えて、バレエ、トレーニングのことなど

有科珠々「パリ発・踊れる身体」

twitterフォローを契機に舞踏家有科珠々(ありしなじゅじゅ)氏のHP(http://www.dansenuba.fr/)を拝見したところ、オリジナル作品の動画が掲載されており、音楽と共にある踊りに魅入ってしまった。

舞踏(Butoh)はダンスの脱構築を目指し音楽すら排除することもあると認識していただけに、有科氏自身による作舞が音楽との共存を果たしていることに衝撃を受けた。HPに表題の著作も掲載されていたので、これは購入すべしと発注に至ったのが経緯である。

 

有科珠々、「パリ発・踊れる身体 -有科メソードによるダンスの実践と指導-」、新水社、¥2,800+税、ISBN978-4-88385-124-9

 

簡潔に言えば、踊りとは何かを明快に語り、具体的なメソードを展開している優れた著作である。

巻頭で「ダンスは刹那的な芸術ですから、それを伝達するのは容易ではありませんが、本書は料理家がレシピ本を発表するのと同じ趣旨で書きました」とあるとおり、パリ在住で各国人相手に或いは海外でも教授する有科氏だからこそ異文化コミュニケ―ションを通じて言語化し得たのではないかと推察する。

内容をかいつまんで言うと、身体表現活動をする上で欠かせない身体や顔、呼吸の訓練方法ばかりでなく、声やコンタクトなどの訓練方法も図解入りで明示されている。訓練方法を活用すれば作舞の方法論として読めるようになっており、非常に親切な設計である。

中でも秀逸なのは、第3章2節「絵作り(空間処理)」、3節「音、音楽とダンスとの関わり」である。私が衝撃を受けた動画(音楽と共存した舞踏)で見たものが何であるのかわかったように思える。

この著作はアーティスト有科珠々の真骨頂がぎっしり詰まっている汲めども尽きせぬ泉である。アマチュアでも作舞を試みる者にとって得難いものを入手したと喜んでいる。